Friday, February 1, 2013

Kさん

あれは確か中学3年だったと思う。授業の一環で皆の前で一人ずつ、何かを発表する機会があった。どんなテーマだったのか、自分が皆の前で何を話したのかまったく覚えていない。
けれど、クラスメートのKさんが話したことだけはしっかりと覚えている。
その位、衝撃的だった。Kさんとはまったく話をしたこともない、単なるクラスメートだった。彼女はどちらかというと(とうかかなり)大人しく、授業中でも発言することはなかったように思う。このことがなければ私は彼女の名前を覚えていることもなかったであろう。高校3年までKさんをみる機会はたくさんあっただろうに、私の記憶の中のkさんは中学3年のままである。
彼女はこんな話をした。
「私はあきらめることができる人がうらやましい。本当に頑張って、もうだめだと思ってあきらめれば、後悔することはない。やり切らずにあきらめると後悔しか残らない。私は後悔が怖くていつもあきらめることができない。私は本当にやり切ったのだろうかといつも迷っている。だからきっちりあきらめることが出来る人がうらやましい」と。
私たちは何事もあきらめちゃいけない、一度始めたことは何としてでも最後までやりとげるべきだという教育を受けて来た。そして頑張れば頑張った分だけ見返りがあると。私はその言葉を素直に信じてきた。大人の言うことはいつでも正しいと信じ込んでいた私には同級生のKさんがこんなことを考えているなんて衝撃的だった。どんなに頑張ったってあきらめなきゃいけないことが世の中にはたくさんあるんだ。

彼女とは以後、同じクラスになることもなかったし、彼女のクラブ活動も思い出せない(大概、同級生の話をするときは水泳部の○○ちゃん、などというようにクラブ活動とリンクされているのだか)。だけど初めて、大人の世界を教えてくれたKさんは私の人生に影響を与えた人なのかもしれない。